株式会社S&C
5分でわかる!
成功する
転職活動基本のキ
株式会社S&C
代表コンサルタント 渡邊 崇
私は医師を中心としたエグゼクティブ専門の転職エージェントをライフワークとしています。
経営者として長年、採用にも携わってきました。
自身も30代から4回転職し、転職する度にキャリアと年収を高めてきた、いわば「転職のプロ」です。
自分や周りの環境をよりよく変えようとするとき、「転職」は最も即効性の高い手段です。
ただし、今の仕事を続けながらの転職活動は時間的にとてもタイトです。
さらに、新卒時の就活と違い、孤独な戦いになりがち。
人によっては育児や介護と並行しながらになり、心身ともにハードです。
今回、転職活動の「基本のキ」をプロセスごとにまとめました。
物理的・精神的な制約がある中で、できる限りベストの転職をするための一助になれば幸いです。
転職活動のプロセス
プロセス ①
「転職の軸」を定める
「心地よく働ける環境」
を考える
プロセス ②
プロセス ③
求人探しの3つの方法
プロセス ④
求人の具体的な
掘り当て方
プロセス ⑤
エントリー時の
職務経歴書は
ラブレターのごとく
プロセス ⑥
面接での振る舞いと
伝えるべきこと
プロセス ⑦
内定前のミスマッチを
防ぐためのひと工夫
プロセス ⑧
内定受諾までに
やるべきこと
プロセス ⑨
退職手続きは粛々と
プロセス 1
まず、「転職の軸」(なぜ転職をしたいのか、転職して何を実現したいのか)を固めないと話が進みません。
寧ろ、これが定まらないうちは本格的な転職活動を控えるべきです。
「転職の軸」は「現状への不満」とほぼイコールです。
主には下記の5つです。
①勤務条件(給与、勤務地、労働時間等)
②職場環境
③仕事内容
④自分のキャリア・スキルアップ
⑤会社・業界への将来性
上記5つについての不満が、現職では本当に解消できないのかを確認・検討しましょう。
具体的には、昇進や異動、転籍等により不満が解消されるなら、何も慌てて転職する必要はありません。
確認・検討した結果、
「やっぱり今の会社にいてはこれが解消できない」
となった場合、それが「転職の軸」になります。
複数ある場合は、解消したい順に順位付けをしましょう。
それがあなたにとっての優先順位となります。
プロセス 2
転職の軸が定まったら、自分にとって「心地よく働ける環境」を、下記の4つの視点で考えてみましょう。
1
企業文化
(例:ボトムアップかトップダウンか、オンオフメリハリか仕事第一か、など)
2
コミュニケーションスタイル
(チームワークか個人主義か、フレンドリーかサバサバか)
3
評価制度
(成果主義かプロセス主義か、昇進・昇給、インセンティブなど)
4
エリア・アクセス
(乗り換え、最寄り駅、通勤時間など)
上記は、転職後のミスマッチを防ぐためにも、できる限り具体的にイメージしておくことが重要です。
いくら好待遇でも、"心地よく働ける環境でないと長続きしない" リスクがあります。
「転職の軸」と同じように優先順位をつけ、判断材料にしましょう。
ちなみに、「転職の軸」と「心地よく働ける環境」は、「一旦こう決めたからには初志貫徹しないとダメ」と頑なになる必要はありません。
転職活動の過程で求人や面接に触れるうちに考え方が変わることがあるためです。
決めつけは却って可能性を狭めるリスクがあります。
プロセス 3
「転職の軸」と「心地よく働ける環境」がある程度固まったら、実際に求人を探してみましょう。
主に「転職エージェント」と「求人サイト」、「友人・縁故」(リファラル)の3つのアプローチがあります。
それぞれメリット・デメリットがありますので、適宜組み合わせていくのが良いでしょう。
【 転職エージェント 】
メリット
メリット
・専門に特化したキャリアアドバイザーから転職活動全般のサポートを得られる
・求人サイトでは得られないハイスペック求人が多い
・非公開求人を保有している(新規事業立ち上げ等のシークレット案件)
・企業の内情を把握していることが多く、推薦を得られる
デメリット
・高年収に偏った求人提案をされがち(転職後年収と営業成績が連動するため)
・ 「ハズレ」のキャリアアドバイザーを引くと希望と異なる方向に進みがち
【 求人サイト】
メリット
・マイペースで転職活動ができる
・ 多くの求人に触れることができる
デメリット
・求人の特徴がつかみづらい
・ライバルが多い
・転職活動の全てを自分で行う必要がある
【 友人・縁故(リファラル)】
メリット
・自分の能力、性格、志向を把握しているからマッチした求人になることが多い
デメリット
・オファーを断りづらくなる
・ 雇用条件があいまいなことが多い(特に、ベンチャーの場合)
プロセス 4
まずは求人の「相場」を確認しましょう。
取っ掛かりとしてはエン転職やDODA、マイナビ転職などの大手求人サイトを利用するのが良いでしょう。希望条件を選択していくと、自分の希望する業種・業界・ポジションでどのような求人があるかを把握することができます。
めぼしい求人にありつけなかった場合は、
◆「自分のポータルブルスキルを活かせそうな別業種や職種を探してみる」
◆「大手だけでなく中小・ベンチャーの求人も見てみる」
◆「エリアを広げてみる(23区内→立川市までOKなど)」
といったひと工夫をすると、お目当ての求人にたどりつける可能性が高まります。
同時に、転職エージェントにも登録しましょう。
特にホワイトカラー、エグゼクティブ、エンジニア等の専門職は転職エージェントを利用するのが一般的になっています。
前述の通り、どうしても当たり外れがあるため、時間があれば複数登録してみて、本当に転職活動のパートナーになってくれそうなエージェントを選ぶのが良いでしょう。
プロセス 5
求人サイトとエージェントを駆使し、「これは」と思う求人にたどり着いたら、いよいよエントリーです。
エントリーにあたっては、履歴書と「職務経歴書」を作成する必要があります。
特に職務経歴書は志望企業へのラブレター的なもので、この出来如何で書類選考突破率は大きく違ってきます。
少なくとも、「実績の再現性」と「前向きかつ納得感のある志望動機」は盛り込みましょう。
詳細は是非、拙稿「転職は職務経歴書が10割!」をご一読下さい。
ちなみに、転職情報サイトなどで
「書類選考の突破率は平均10%以下なので、よっぽどのNGでない限り手当たり次第エントリーしましょう」
といったアドバイスを目にしますが、半分正解・半分不正解です。
「どうしても2カ月以内に転職しないといけない」という緊急性が高い場合でもない限り、3社程度に絞り、じっくり吟味した方が良いと思います。
行きたくもない会社からオファーを受けたとしても、面接自体、時間の無駄です。
転職活動は想像以上に心身を疲弊させます。
ただ、これまで転職活動の経験がほとんどないようでしたら、流れを知るために一度、練習のつもりで受けてみるのはアリです。
その会社には申し訳ないのですが...。
プロセス 6
さて、企業研究し、職務経歴書を練り上げ、ついに志望企業の面接までたどり着きました。
面接では、あなたの「スキル・経験・能力・将来性」、「柔軟性・適応能力」、「コミュニケーション力」を、質疑応答の中で証明していくことになります。
ベストのアウトプットをするために、【 面接前 】→【 面接中 】→【 面接後 】を通して、最低限、気を付けて欲しいことをまとめました。
【 面接前 】
◆当日のスーツや必携物(履歴書・職務経歴書・メモ帳)は前日のうちに用意しましょう
◆当日は最寄り駅に30分前に到着し、喫茶店で一服する余裕を持ちましょう
◆最低限、職務経歴書の見直しとトイレでの身だしなみチェックを行いましょう
【 面接中 】
◆面接官は能力や経歴だけでなく、「この人と一緒に長く働けそうか」を見ています。基本の表情は「ほほ笑み」が正解です
◆面接は職務経歴書の内容を具体的に語る機会です。記載内容とあからさまに異なることは言わないようにしましょう
◆NGワードは「他責」「ネガティブ」「悪口」。OKワードは「ポジティブ」「前向き」「積極的」
◆「キャリアアップを図りたい」が通用するのは新卒・第二新卒までです。中途は採用メリットを語りましょう
◆話す3割、聴く7割の姿勢を徹底しましょう。ダラダラと長い話は相手を苛立たせます。全ての回答は1分以内を目指しましょう
◆面接官が複数いる場合は全員を均等に見ましょう
◆気付きの点は極力メモを取りましょう。本気度が伝わります
【 面接後 】
◆面接会場を完全に離れるまでは気を抜かないようにしましょう。どこで見られているかわかりません
◆連絡先を交換できた場合は即お礼のメールを送信しましょう。感謝と意欲について端的に伝えましょう
プロセス 7
あなたが面接で好印象を持ち、企業から
「●〇さんがよければ是非オファーをしたい」
と、いわゆる「相思相愛状態」になったとします。
それでも、
「社長や役員は面接でこう言っていたけど、あれは本当なのだろうか」
などと不安になるものです。
そこで、可能であれば、現場の人と会う機会をもらえないか相談してみましょう。
経営者の話と齟齬がないか、ミスマッチがないかをチェックするのです。
最近は、選考過程で企主導で社員面談をセッティングするところも増えてきましたので、すんなり応じるところの方が多い印象です。
ちなみに、特に経営幹部ポジションの採用の場合は、経営陣とのアルコール付きの会食を設けることもよくあります。
ただし、酔いが回っていい気分になり「失言」してしまい、せっかくの話が「なかったこと」になるリスクもありますが...。
プロセス 8
面接であなたの魅力をアピールすることに成功し、ミスマッチの懸念も解消し、晴れて意中の企業から内定を得ました。
大変お疲れ様でした!
ただ、登山でたとえると9合目です。詰めを誤ると一気に転落、これまでの努力も水の泡、ということにもなりかねません。
内定受諾までに確認しておきたいポイントを下記にまとめました。
【1】はマスト、【2】・【3】はできれば内定を得るまでに確認しておきたいところ。
内定の有効期限は概ね1週間程度ですが、なるべく早い回答がベストです。
下記事項を速やかに確認し、意向を伝えましょう。
内定受諾までに確認しておきたいポイント!
【1】勤務条件
・入社日/試用期間/契約期間
・勤務地
・業務内容
・給与/賞与の支払い方法/支払い日
・労働時間/残業規程
・手当(通勤交通費/住宅補助等)
・休日出勤の有無
・社会保険の加入状況
・休日/休暇(慶弔休暇、育児休暇等)/有給
【2】達成基準と評価基準
・自分に求められている業務内容
・どのような成果になったら「達成」で、それがどのように「評価」されるか
・昇給/昇格のイメージ
【3】権限(特に管理職の場合)
・マネジメントの範囲
・人事権の範囲
・使える経費の範囲
なお、もし給与交渉を行うならこのタイミングがベストです。
ただ、闇雲に「あと50万円欲しいのですが」と言っても交渉にはなりません。
少なくとも「他の会社から得ているオファーがその額で、迷っています」くらいのことは言えないと厳しいでしょう。
それに加えて、例えば営業なら、
「目標額を1割増ししていただき、それを絶対に達成しますので、もう50万円上げていただけないでしょうか。今かけていただいている期待以上に貴社に貢献しますので、ご検討下さい」
というメリット提案をしてみましょう。
交渉の成功率はかなり高まります。
ただし、交渉をすること自体、目標を下回ると途端に居づらくなる「諸刃の剣」であることは理解しておいた方がよいでしょう。
評価は入社後に高めておく方が結果的にプラスであることが多いようです。
なお、このタイミングでも「本当に転職すべきなのだろうか」と迷いが生じることがあります。
その場合は「現職に留まることによるリスク」と「転職により広がる未来」を、冷静に比較した上で判断しましょう。
また、いわゆる「嫁ブロック・夫ブロック」問題が生じることも。
それを防止するためには、転職活動の進捗をこまめに共有し、コンセンサスを得ておくことです。
プロセス 9
内定を受諾したら即、現職に退職届を提出します。
事前に就業規則を読んで、入職日通りに転職するためにはいつまでに退職届を出さないといけないかを確認しておきましょう。
それでは退職届を誰に、いつ、どこで出すか。
ケースバイケースではありますが、基本は下記の通りです。
誰に=「直属の上司に」
いつ=「始業前か終業後(「ご相談があります」とアポを取ったうえで)」
どこで=「会議室など人目につかないところで」
伝え方のポイントは粛々と、「次が決まっていること」を告げた上で、「これまでの感謝」を述べることです。
例文は以下の通りです。
「きょうはお時間を作っていただいてありがとうございます。
実は、この度退職することにしました。次の進路は決まっています。
〇〇さんと会社にはこれまで大変お世話になりました。
私が今あるのも〇〇さんと会社のおかげです。
〇月までは引き続き会社に貢献しますので、何卒宜しくお願い致します」
「次が決まっている」と言えばふつうは慰留をしてこないものですが、それでも様々な(退職者が出ると成績や出世にかかわる等)理由から慰留を試みる上司もいます。
「給与を上げるから」「役職を上げるから」などとあの手この手で引き留めを試みますが、「次が決まっていますので」とやんわり、かつ適切に固辞しましょう。
これは切ない話ですが、上司にしてみれば、一度退職を口に出した時点であなたは「裏切者」です。
仮に慰留に応じたとして、将来、社内の業績が不振になった場合、あなたはリストラの一番手となると思って良いでしょう。
また、心理的に転職を言い出しづらくなるデメリットもあります。
退職を告げる時点で腹を決めるのが結果的に正解です。
「次が決まっている」と言えばふつうは慰留をしてこないものですが、それでも様々な(退職者が出ると成績や出世にかかわる等)理由から慰留を試みる上司もいます。
「給与を上げるから」「役職を上げるから」などとあの手この手で引き留めを試みますが、「次が決まっていますので」とやんわり、かつ適切に固辞しましょう。
また、転職先の会社名や転職後の業界は誰にも言う必要はありません。
転職理由も然りです。
前者はそもそもプラスがない上に、嫌がらせを受けるリスクが高まりますし、後者は、それを語りだすと、どうしても現職の不満になってしまい、雰囲気が険悪になり、退職までの期間が憂鬱になるだけです。
今回紹介した9つのプロセスを踏んでいけば、おのずと転職成功につながるはずです。
とはいえ、転職活動はケースバイケース。
アドバイス依頼も承っております。
下記よりお気軽にご連絡ください。